ビートたけしさんの本です。たけし軍団の間抜け事件、コント、漫才、テレビタックルでの討論や、映画に関して詳しく分析して解説してくれているので、お笑いを目指す人は読むべき本かと。そうでない人でも楽しい本だと思います。またビートたけしさんっぽい、夜のお姉ちゃんネタや下ネタトークなどもあり、ここでは書けませんが、お笑いネタに興味がある人は一読してみてはいかがでしょうか。
「間抜けの構造」
間抜けとは「間の悪いやつ」のこと。間というものをコントロールできるのか、人生いかに間を活かすかを考えたい。
政治家がこんなに間抜けな発言をするのかというと、自分がどういう立場にいる人間化がわかっていないからだ。自分を客観視する能力がないからこういうことになる。
空気が読めないなんて言葉が流行ってるけど、「言わなきゃいいことを、言っちゃうやつ」というのはたいてい間抜けだから。「そういう状況のときは、黙ってありがたく従う」というお約束が守れない。
芸能レポーターも間抜けが多い。現場で張り込んでいるレポーターが、車に乗り込んで立ち去ろうとしている渦中の芸能人に向かって大声で叫ぶ。「○○さんとの関係はどうなんですか!」そんなことを運転しているやつに言っても答えるわけがない。大体、声が届いていない。車を止めてグーと窓を開けて、「えー、彼女と関係は。。。」って言うわけないだろう。「愛はまだ続いているんですか!」「なぜ二股をかけたんですか!塩谷さん!」知ったこっちゃないよ!「男女の関係はあったんですか?」という質問も間抜けだな。「男女の関係」ってなんだよ。「やったかやらないか」って素直に聞けよ、ばかやろう。
覚せい剤で捕まった若い俳優に、レポーターが「奥さんはどう思ってるんですか?」って、これも答えるわけない。奥さんに直接ききなさい。警察の車で運ばれる俳優に「奥さんの気持ちをひとこと」って言っても、わざわざ出てきて「えー、かみさんの心境を代弁すると、、」なんて言うはずないんだから。
名乗るだけで笑いをとれるなんて、なかなかそんなチャンスはないよ。芸能人の離婚会見で、「「漫画エロトピア」の北野でと申します。夫婦間の夜の営みは、、、」とやれば、場内爆笑まちがえなしなんだけどな。
コントというのは、こういう間抜けな状況を意図的に作るという事。
軍団の間抜け話はきりがない。あいつらみたいに間抜けなことばかりしていたら、一般企業だったらとっくにクビになってるよ。でもお笑いは、そうした社会とは違う世界だから。向こうの常識はこちらの非常識であって、向こうの非常識はこっちの常識。一般企業に合致するようなことばかりしていたら、それこそお笑いの世界では通用しない。
実践をやらないやつは一切ダメ。これは芸でもスポーツでもなんでも共通することだけどね。
ニュースだけでなくて、いつからかお笑い番組にもテロップがいっぱい出るようになった。「ここは笑うところですよ」って教えてやっているつもりなのか。文字で確認してからじゃないと笑えない。そんな時代になっているんだろうけど、そうだとしたら、今の人は相当頭が悪いね。テレビからどんどん間がなくなっちゃっているから、その代わりにラジオというのはもっと評価されていいメディアだと思う。
討論のときにどこで話に入っていくかというのは、縄跳びに入っていくタイミングを見極めるのと同じで、それが上手い人と下手な人がはっきり分かれる。「最後に一つだけ言わせて」というやつも嫌われる。そう言うやつに限って、一つで終わった試しがない。
歌舞伎町のホストも間を空けない。じゃんじゃん話をして、間を埋めていって、気持ちよくさせて何十万円もするシャンパンとか注文させるのが基本だからね。
今の日本の若い人とか、これから日本に生まれてくる人は大変だよ。バブルが弾けてからいっこうに景気がよくならないし、これから上向きになるとも思えない。人口もどんどん減ってくるし、国力も今の状態を保てるかあやしい。だから、生まれた”間”が悪かった、ということはあるんだよ。才能と実力もあるけど、最後まで時代との相性が悪くて、世に出ることができなかった、なんていう人はどの分野でもざらにいる。あらゆる業者というか職種に波みたいなものはあって、その時代にその分野にいるかどうかというのは運でもあるし、”間”がいいかどうかが試される。
落ちこぼれでもいいから、人と違う事をしようと思った。役者と乞食じゃないけど、芸人も一度やったらやめられない。客を笑わせるというのは、麻薬みたいなところがあるんだ。
ほんのわずかな人間しか、古代ギリシャや何百年前の問題を解けない。一握りの天才や芸術家が世の中を引っ張ってきただけなんだ。その他の大勢の人間は、それに乗って生活しているだけ。そのことを忘れないほうがいいと思う。マッチ一個、釘一本自分でつくれやしない。天変地異が襲ったら、一瞬で終わっちゃおう。そういう危うい土台の上に、我々は立っているということを忘れちゃいけないよ。
本当は人生の”間”があったほうが豊かになるのに。みんな履歴書に空欄をつくらないように、人生の”間”を必死で埋めようとしている。もう一回”間”というものを見直して、生き方を考えてもいいんじゃないのかと思うけどね。そんなところが結論なんじゃないかな。間延びしないうちに、この辺で終わりとするか。